2009年6月18日木曜日

地下水への招待─日本地下水学会・井田徹治〔著〕『見えない巨大水脈 地下水の科学』

本書は、地下水についてさまざまな視点から書かれている本である。副題にもあるように、地下水は「使えばすぐには戻らない『意外な希少資源』」であることも、本書を読みすすめていけば納得できる。

地下水は現在、人為的な汚染や過剰なくみあげによって危機的な状態になっていることも、本書から教えられた。日本でも、地下水の過剰なくみあげが原因の地盤沈下など、被害が続いており、汚染されている地下水も少なくない。

本書では、民法で保障された土地所有権に基づいて、私有地の地下にある地下水を土地所有者のものだとする「私水説」に対して、「地下水は河川の水と同様に流動しているのだから、その恩恵は土地の所有者だけではなく、関連するすべての人が享受すべきだ、との主張」である「公水説」を紹介しており(p.236.)、さらに、欧米で有力になりつつある「地下水を社会の『コモンズ(共有財産)』として扱おうという議論」(p.236.)も紹介し、日本における「地下水」観のさらなる発展をうながしている。法律学研究者らによる「公水説」の意味づけが急がれる。

「一般の方々に地下水について興味や関心を持っていただき、きれいな地下水をいつまでも保ち続けていけるようにとの願いのもと活動をして」いる日本地下水学会市民コミュニケーション委員会ウェブサイトについても紹介されている(p.245.)。本とサイトが連動している点も、本書の特徴のひとつであろう。

索引と参考文献欄も完備しており、また、付録として「名水百選ガイド」(pp.246-261.)が附されている。

日本地下水学会・井田徹治〔著〕見えない巨大水脈 地下水の科学─使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」〔『ブルーバックス』B-1639〕、講談社、2009年5月20日、267, iiip.)

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