2009年5月10日日曜日

スポーツ基本法(仮称)に反対する

今日(5月10日)の『読売新聞』によると、麻生太郎首相が会長を務める議員連盟が「スポーツ基本法(仮称)」という法律をつくろうとしているYOMIURI ONLINEの記事「「スポーツ政策は国家戦略」基本法骨子案、競技力を重視」を下記に全文引用する)

記事によれば、この法律の骨子案では、「アスリートの育成など競技力向上を重視したことが特徴」であり、「自治体や企業、競技団体などとの連携強化のため国の行政を一元化するスポーツ庁構想につなげたい考え」であるとのこと。

国がおこなうべきスポーツ政策というのがあるとするならば、それは「アスリートの育成」や「競技力向上」などではなく、国民一人ひとりの健康維持の可能性を拡げる政策である。たとえば、だれもが安価に利用できる体育施設の整備や、そうした施設を利用する市民に助言できる豊富な知識をもった指導員の育成である(指導員の育成と「アスリートの育成」は直結しない)

オリンピック選手の育成のためという理由では、税金をたとえ1円たりとも使って欲しくない。「競技力向上」など、国が掲げる目的にはなり得ないものである。そういったことに使う税金があるなら、感染症対策や難病治療のための研究に使うべきだ。そもそも、オリンピック選手の育成は、「国」が政策として実行するのではなく、「社会」の領域でおこなわれるべきものである。くりかえすが、税金でオリンピック選手の育成など決して実行してはならない政策である。日本国はいつから、権威主義体制の発展途上国になったのだ。

「スポーツ庁構想」というのも、噴飯物の政策だ。これが官僚のもくろむ天下り先の確保であることは、火を見るよりもあきらかであろう。上に書いたことと重なるが、国はスポーツという領域にこうしたかたちでかかわってはならない。スポーツ基本法(仮称)によって構想されている内容は、「社会」の領域でおこなわれるものであって、「国」や「行政」の領域ではない。国は、学校教育や社会教育の範囲内、あるいは公共的な保健衛生の範囲内で、つまり国民一人ひとりに還元されるかたちでしかスポーツにかかわってはならないのである。限られた国の資源を、「アスリートの育成」や「競技力向上」といった国民一人ひとりに決して還元されないかたちで用いることには断固反対である。

ついでに言うが、2016年の夏季オリンピックの東京誘致にも反対である。急病のときに安心して救急車も呼べない都市が、オリンピックのために税金その他の資源を使うのは、本末転倒という愚かさを超えて、住民を愚弄しているとしか言いようがない。

 超党派のスポーツ議員連盟(会長・麻生首相)が検討している「スポーツ基本法(仮称)」の骨子案が明らかになった。
 現行のスポーツ振興法が国民の健康を主眼としているのに比べ、アスリートの育成など競技力向上を重視したことが特徴だ。議連は今国会への法案提出を目指し、自治体や企業、競技団体などとの連携強化のため国の行政を一元化するスポーツ庁構想につなげたい考えだ。
 骨子案ではスポーツ政策を国家戦略として位置づけ、「国や自治体の責務や義務規定を記載する」とした。国が取り組むべき基本施策として11の課題を提示。国際社会で日本の存在感を高める方策として競技力を重視し、〈1〉トップアスリートの支援〈2〉国際大会の招致〈3〉スポーツビジネスの充実―― などを盛り込んだ。障害者競技スポーツの環境整備やドーピング撲滅などに対する国内での取り組み推進も明記した。
 1961年に制定されたスポーツ振興法は、競技力向上に関する規定が少なく、営利目的のプロスポーツを対象から外すなど、「時代に合わない」との指摘があった。同議連はスポーツ振興法を全面改定したスポーツ基本法の制定を目指し、有識者会議に内容などを諮問していた。
(2009年5月10日11時16分 読売新聞)

1 件のコメント:

  1. 全く同意見です!! このほど成立したみたいですが・・・
    アスリート養成よりも国民の健康増進が目的であるべきです。
    利権の臭いがぷんぷんします。
    予算を使うなら子宮頸がんワクチンの無料配布でもしろよと思います。

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